「やんばる」ってどんなところ?|世界遺産登録で注目を集める沖縄本島北部を知ろう①

2021年5月10日、沖縄にうれしい速報が飛び込みました。「奄美・沖縄 世界遺産に!」、国連教育科学文化機関(ユネスコ、IUCN)の諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)から、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」を世界遺産に登録する勧告が出されました。2021年7月には正式に登録が決定される見通しです。今回は“やんばる”と呼ばれる沖縄本島北部エリアについてご紹介します。
→やんばるに関する記事はこちら

“やんばる”ってどこ?

この「沖縄島北部」は古くから、“やんばる”という愛称で親しまれています。やんばるは「山原」と表記し、文字通り、山や原っぱなど、自然が多く残されているエリアのことを指します。

やんばる国立公園/©OCVB

「やんばる」とされるエリアに明確な定義はなく、「やんばる国立公園」のある名護市より北の国頭村(くにがみそん)、大宜味村(おおぎみそん)、東村(ひがしそん)の3村を指すこともあれば、広義には名護市、今帰仁村(なきじんそんん)、本部町(もとぶちょう)、恩納村(おんなそん)、宜野座村(ぎのざそん)、金武町(きんちょう)まで含む例もあり、まちまちです。ただ、“自然が多く残っているエリア”であることは変わりなく、多くの沖縄県民の“やんばる”のイメージも同様です。

沖縄ファンにとっての沖縄のイメージは、“青い海”とやんばるに代表される“手付かずの自然”ではないでしょうか。雄大な沖縄の自然を求めて、やんばるエリアをドライブした人も多いと思います。

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沖縄本島の北部と南部ではこんなに違う!?

沖縄本島は、南北110km、東西10kmと細長い島というのが特徴。110kmもある南北を細かく見ていくと、土壌も地形も文化も違う部分が多く、沖縄の多様性を形作っています。

まず、土壌について。非常にざっくり言うと、沖縄本島中南部は「島尻マージ」「ジャーガル」という土壌で、隆起サンゴ礁石灰岩土壌と泥灰岩の風化土壌という弱アルカリ性の土が広がっています。一方、北部は「国頭(くにがみ)マージ」という強酸性の土壌。

南部ではさとうきびや葉野菜類が多く、北部はさとうきびのほか、パイナップルや果樹が多いのは、こういった土壌の違いから来ています。

地形にも特徴があります。島の中南部は石灰岩のために小さな起伏丘陵で200m以下の平らな地形となっています。一方で、やんばる地域を含む北部周辺は、沖縄本島で最も高い与那覇岳(503m)など標高400m以上の山地が島の中央部に向けて脊梁山地を構成しています。

沖縄本島の最高峰・与那覇岳/©OCVB

土地の高低差から沖縄本島の二級河川37水系57河川のうち9水系18河川がやんばる地域にあり、また、国頭村の比地大滝(ひじおおたき)、大宜味村のター滝など滝が多いのもやんばるの特徴と言えますね。

ター滝/©OCVB
喜如嘉の七滝/©OCVB

動物も植物も貴重種の宝庫!

そして、これだけの自然が残っているエリアでもあるので、貴重な動植物の宝庫としても有名です。

真っ先に浮かぶのは、やんばるの名前が付いた“ヤンバルクイナ”ではないでしょうか? 日本でも沖縄の北部にしか生息していない鳥類で、絶滅が危惧されている貴重な生物です。

ヤンバルクイナ/©OCVB

絶滅危惧種だけに野性のヤンバルクイナにはなかなか出合えませんが、国頭村には、ヤンバルクイナの生態などの資料が展示されている施設「クイナの森」があり、施設内には生息環境を再現した観察ブースがあります。

このほかにも、絶滅危惧種に指定されているノグチゲラ(キツツキ科)、昆虫では、日本最大の甲虫・ヤンバルテナガコガネ、植物では、花の姿がトンボに似ているクニガミトンボソウなどが有名です。

ノグチゲラ/©OCVB
ヤンバルテナガコガネ/©OCVB

多くの人がその美しさに魅了される「芭蕉布」

この自然豊かな地では古くからさまざまな文化も育まれていて、特に有名なものとしては、「芭蕉布(ばしょうふ)」が挙げられます。100年以上の歴史を持つ織物として、国の重要無形文化財に指定されています。

柄も多様な芭蕉布/©OCVB

特に、大宜味村喜如嘉(きじょか)の芭蕉布は品質・生産量共に著しく高く、品評会でも喜如嘉のものは他の地域のものとは分けて審査されるほどでした。日本民藝運動の創始者の一人、あの柳宗悦(やなぎ・むねよし)も芭蕉布を愛してやまなかったそうで、私家本の「芭蕉布物語」の中でも「今時こんな美しい布はめったにないのです」と絶賛しています。

柳宗悦も絶賛した美しい芭蕉布/©OCVB

系芭蕉を「葉落とし・芯止め」から実に8つの工程を経て、そこから「縦系」と「横糸」によって、それぞれさらに2工程ほどで織物として完成していきます。「大宜味村立芭蕉布会館」では、その製作工程の映像が見られるほか、芭蕉布の展示も行われているので、その美しさに触れてみましょう。

大宜味村立芭蕉布会館/©OCVB

やんばるはエンターテインメントにも!

また、やんばるはエンターテインメントの世界でも扱われています。例えば、沖縄の出版社・ボーダーインクから刊行された「山原バンバン」。

「山原バンバン」(大城ゆか著/ボーダーインク刊)

1994年に、ヤンバル在住のまんが家・大城ゆかさんが書き下ろし作品として刊行されました。主人公の女子高校生・夏美とその家族、友だちが織り成すキュートで、ヤンバルの言葉がそのまま使われたストーリーは、ローカルコミックの傑作として、長年沖縄県民に愛されています。

また、ウエンツ瑛士さんが主演した映画『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌 スタンダード・エディション』は、やんばるを舞台に撮影されました。緑生い茂る森や「大石林山(だいせきりんざん)」の景観が妖怪の世界観に絶妙にマッチし、独特の雰囲気を醸し出しています。

切り立った岩山の絶景スポット「大石林山」/©OCVB

伝統行事&イベントも多種多様

やんばるでは、1年を通じて、さまざまなイベントも行われます。国頭村安田(あだ)には、国の重要無形民俗文化財に指定されている「安田のシヌグ」という伝統行事があります。毎年旧暦7月の最初の亥(い)の日から2日間行われ、無病息災や五穀豊穣を祈願する儀式です。

安田のシヌグ/©OCVB
安田のシヌグ/©OCVB

親子向けの行事では、毎年5月上旬、ゴールデンウィーク期間中の3日間に、国頭村の「奥ヤンバルの里」前を流れる奥川の河川公園で鯉のぼりの祭りが行われます。川の上、青空をバックに気持ち良さそうに泳ぐ鯉のぼりは、色鮮やかで思い出に残る1シーンとなるでしょう。

奥ヤンバル鯉のぼり祭り/©OCVB

スポーツイベントも沖縄を代表する大きな大会が行われます。毎年11月に行われるロードレース「ツール・ド・おきなわ」は、ロードレース以外にも、UCI(国際自転車競技連合)の公式レースになっているチャンピオンレースのほか、サイクリング部門もあり、この時期になると、沖縄本島を走るサイクリストが増えるのも名物になっています。

ツール・ド・おきなわ/©OCVB

そして、近年はアートの祭典「やんばるアートフェスティバル」も賑わいを見せています。沖縄県本島北部で開催する地域芸術祭で、現代アートや伝統工芸を巡りながら、地域の魅力を体感・体験できるイベントです。

やんばるアートフェスティバル/淀川テクニック作

やんばるの大自然と景観、それとアートの融合が何ともいえない体験を提供しています。次回は2021年12月18日(土)~2022年1月16日(日)まで開催が予定されていますので、ぜひ足を運んでみてください。

やんばるアートフェスティバル

やんばるの水仕込みの「オリオン ザ・ドラフト」で乾杯しましょう!

この自然豊かなやんばるの水、実は沖縄県内一の軟水でもあるんです。オリオンビールの代表銘柄「オリオン ザ・ドラフト」は、ビールに適したやんばるの水仕込み。沖縄の大自然の風景に思いを馳せながら、味わってみてください。

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