皆さんは「酵母」という言葉を聞いたことはありますか?
主にパン作りやビール作りなどに関連した言葉として耳にする機会がありますが、身近なようでいて、少し分かりにくい存在でもあります。
今回発売されるオリオンビールのプレミアムビール「オリオン ザ・プレミアム」には、沖縄由来の酵母が使われています。今回「オリオン ザ・プレミアム」作りの過程で沖縄の自然から奇跡的に発見された「沖縄酵母 OB-001」や商品開発にかけた思いなどを紹介します。
3年前、オリオンビールは途方もない酵母探しの旅を決意!
そもそも「酵母」はどんなものかというと、糖をアルコールと炭酸ガスに分解する微生物です。ビールは、麦芽、ホップ、水、そこに副原料、酵母などがプラスされ、造られていきます。
ビールは、まず原料である麦芽、ホップに水(副原料が入る場合もある)を加え麦汁をつくります。この麦汁には麦芽から溶け出した糖が沢山含まれており、酵母を添加する事でアルコールと炭酸ガスを含むビールになります。
ビール酵母は、発酵段階で投入することによりビールの複雑な味や香りを作り出していく働きがあり、ビールにとってなくてはならない、非常に重要な存在なのです。
酵母は自然界のあらゆるところに存在していますが、その中でもアルコール発酵ができる酵母はごくわずか。さらにその中からビールに適したものを選んで純粋培養をするのですが、通常、ビールメーカーでは、自らの手で自然界から新しい酵母を収集し、それをビール造りに使用することはありません。
それだけ、自然界からおいしいビールを造ることができる酵母を見つけるという作業には時間と労力がかかり、かつ、見つけられなければその時間と労力を無にしてしまう、まさに賭けのようなことといっても過言ではないのです。
そんな一見無謀ともいえるチャレンジを、オリオンビールは今から3年ほど前に着手しました。「日本最大の地ビールメーカーとして沖縄から世界に誇れるビールをつくりたい」と考えるオリオンビールは、通常の常識や効率に捉われず、今までにない、最高の味わいのビールを造るための酵母探しから開発をスタートしました。
酵母探索は、バイオ関連の研究開発型企業で複数の泡盛酵母を単離・実用化した実績がある株式会社バイオジェット(沖縄県うるま市、以下バイオジェット社)との共同で実施しました。酵母探しはオリオンビールにとっても経験のない取り組み。こうした新たな分野へのチャレンジは、協力会社とチームを組んで一つひとつの課題を克服していく必要がありました。具体的には、バイオジェット社が得意とする酵母の単離、特性評価、DNA解析、候補株の選抜等の協力により、科学的評価に基づいた新たなビール用酵母の探索を進めることができました。
沖縄を探し歩いて3,000の中からたった1つ選ばれた奇跡の酵母
開発がスタートしてから、オリオンビール社内のスタッフと、バイオジェット社のスタッフでサンプル採集をする日々がスタートしました。
開発を担ったオリオンビール・R&D部ビール商品開発部の大城敬一郎さんは、「(開発が決まってから)家族にはこのビールの話をしていなかったので、家族で出掛けているときもサンプルに良さそうな植物を見かけると、ついつい興味をもってしまうなど怪しい行動をしていました(笑)」と振り返ります。
開発チームで沖縄本島を探し歩いて採取した植物から、バイオジェット社で酵母が分離され、得られた酵母がひたすら調べられました。スタートから約3年が経過しこの時までに調べられた酵母は、既に3,000にも達していました。
そして、これらの中からバイオジェット社にて候補となる株がいくつか得られました。さらに、これらの候補株を使って当社の実験室でビール醸造を行い評価したところ、このうちの1つがビール醸造に適していることがわかりました。新たなビール酵母誕生の瞬間です。3,000もの酵母の中から最終的に1株が決まったとき、大城さんら開発チームのメンバーは「ついに見つけた」という喜びとともに、これから始まる挑戦へのプレッシャーを感じていました。
酵母が決まってからが本当のスタート
大城さんに開発時に一番手が掛かったポイントを聞くと、「発酵の段階」と即答しました。酵母は微生物で生きているため、環境の変化で発酵しなくなる事があるのです。「新しい酵母、かつ、自然界から採集した酵母なので、(前例もなく)使い慣らすことが難しいんです。その調整が非常に難しかった点です」(大城さん)とのこと。
どう発酵を進めていけばおいしくなるのだろうと、あらゆる条件を試行錯誤していくことで、商品化が見えてくることになります。
一方でオリオンビールのマーケティングチームに所属する宮城翔太さんは、この企画が立ち上がったときは「本当に沖縄由来の酵母を見つけてビールにするなんてできるのか…」と半信半疑だったそうです。「(酵母を一から見つけてくることは)ビール業界では本当に例が少なく、我々としても初めての試み。そして、いつ見つかるかも分からないという状態でスタートしましたので、実際に酵母が見つかって試作品ができたとき、正直驚きました」と振り返ります。
商品化に向けて、大城さんが所属するR&D部と宮城さんが所属するマーケティング本部がミーティングの中で試作品を基に造り上げていきます。「最初の頃の試作品は、なかなか満場一致で『おいしい』と言ってもらえなくて」と大城さんは苦笑い。
それからも、開発の途中で酵母の発酵が止まってしまったり、特に酵母を変えていないのに開発チームのメンバーから「何か変えた?」という反応があったりと思わぬハプニングの連続。「酵母自体繊細なものなのに、これまで扱ったこともない自然由来の酵母なので、なおさら分からないことだらけ。さらに、これまでのビールとは異なる味わいなので、『これで大丈夫なのかな?』という不安を抱えながら挑戦を続けていきました」と大城さんは苦労の日々を語ってくれました。
開発と同時にお客様の声を聴き、コンセプトを確定
開発が進められると同時に、宮城さんたちは調査の一環として、県内外のビールユーザーにグループインタビューを実施します。
「特に『どういう気持ちのときにビールを飲みたくなるか』という、日常の中でビールを飲むシーンを深掘りしていきました。答えとしては『ストレス発散したいとき』『スカッとしたいとき』という定番シーンのほかに、コロナ禍で巣ごもりや在宅勤務が増え、人との接触が少なくなり、オンとオフの境目が分かりづらくなった際に『オフ』への切り替えのタイミングのスイッチとしてビールを飲むことが多いという声が聞かれました」
グループインタビューの結果に加えて、沖縄の魅力についても整理をしました。沖縄県外からも高く評価される沖縄の魅力は自然の中で、ゆったりとした時間を過ごし、リラックスして癒されることだと定義。こうしたさまざまな調査や議論を重ねた結果として、「自然を感じ、心と体を癒す。沖縄の贅沢を感じさせてくれるプレミアムビール」というコンセプトを確立していきます。
味わいの決め手は奇跡的に発見した「沖縄酵母 OB-001」
癒やしを感じられるように、苦味の少ないスムースな味わいをポイントに商品化。「他社のプレミアムビールでいうと、コクがしっかりとあり、かつ、苦味があるものが特長として挙げられると思います。今回は他とは違うプレミアムビールを造るために、コクがありながらも苦味を抑えて飲みやすく、フルーティーさを重視しました」と宮城さん。
大城さんは「『オリオン ザ・プレミアム』は口に含んだ後、甘みと共に華やかさが鼻に抜ける感じで、ビールというよりはワインに近い感覚かもしれません。この独特の味わいは沖縄の自然の中から発見した酵母によるもの。『沖縄酵母 OB-001』は発酵段階で糖を分解しきることがないため、コクのある、複雑でフルーティーな味わいのビールとなります」と、その味の特徴について自信たっぷりに語ります。
いよいよ発売…おいしさを求める開発者の日々は続く
今回発見された酵母は「沖縄酵母 OB-001」と命名され、「オリオン ザ・プレミアム」として、10月25日(火)にいよいよ発売されます。それでも大城さんは「まだまだこれからです」と口にしました。
「先ほどもいいましたが、酵母は生き物なので、ちょっとした環境の変化で酵母もすぐに変異してしまいます。これからもこの酵母を培養してずっと『オリオン ザ・プレミアム』を造り続けていかないといけないという使命感と、これから発売される『オリオン ザ・プレミアム』が多くのお客さまに受け入れられていく将来への期待感…。お客様に笑顔になっていただける商品づくりのために、開発者の試行錯誤の日々はまだまだ続きますね」と先を見据えています。
缶体のデザインにもオリオンビールの誇りと自信を反映
まさに、沖縄のビールメーカー・オリオンビールが沖縄でないと造れない最高のビールとして送り出される「オリオン ザ・プレミアム」。その思いが缶体のデザインにも反映されています。
オリオンビールのフラッグシップブランドであることを訴求するために、オリオンビールのロゴは既存商品の中で一番大きいサイズで配置し、上質感のあるゴールドで表現しました。
色合いは海を連想させるような深いブルー。沖縄の海のゆったりとした時の流れを、水の波紋と砂の風紋をモチーフに表現しました。「10案以上の中から調査を重ねてデザインを決定しました。センターの丸いマークの部分の沖縄のサンセットも癒やしの時間を表現したポイントです」とデザインに込めた思いを表現しました。
オリオンビールが自信を持って発売する、沖縄生まれの酵母が醸し出すザ・プレミアムの味わいを、ぜひ体験してください。