「沖縄の味噌」琉球王国の時代から愛され続ける、個性的で優しい味わい

沖縄の味噌を使った郷土料理・アンダンスー。まろやかで、少し甘味のある沖縄の味噌の味わいを感じられる一品/©OCVB

琉球王国の時代から大切な保存食とされていた沖縄の「味噌」。沖縄ならではの気候を活用して造る沖縄の味噌は、それぞれが個性的で優しい味わい。現代でも家庭料理に欠かせない存在として、沖縄の食卓で愛され続けています。今回は、そんな沖縄の味噌について紹介します。

沖縄の味噌とは

琉球王国の時代から、沖縄の味噌は大切な発酵食品であり保存食でした。郷土料理にも味噌を使ったものがたくさんあり、昔ながらの沖縄の味噌造りを守り続けている醸造所もあります。

沖縄は年間平均気温が23度くらいで、かなり発酵に適した環境です。また、1年を通して気温の差が少ないため、短期間で発酵するのも大きな特徴です。沖縄で製造されている味噌は、米や麦、大豆などから製造され、最近では島唐辛子や沖縄の塩、ウコンなどを取り入れたものも販売されています。

沖縄の味噌の歴史をつなぐ「玉那覇味噌醤油」

1855~1860年、琉球王朝末期の安政年代に創業した「玉那覇味噌醤油」。こちらでは現在、4種類の味噌を製造しており、それぞれの特徴を紹介します。食べてみたいという人は玉那覇味噌醤油のウェブサイトからも購入が可能で、沖縄県内のスーパーマーケットなどで手に入ることもあります。

特選みそ

沖縄の塩・シママースを使用した「特選みそ」/画像提供:玉那覇味噌醤油

丸大豆を麦と米の麹で仕込んでいる合わせ味噌です。沖縄の塩も入っていて、香りが豊かなのが特徴です。

首里みそ

アンダンス―作りに合う「首里みそ」/画像提供:玉那覇味噌醤油

大豆に米麹を使った味噌で、甘さとまろやかさがあるのが特徴です。沖縄の郷土料理「アンダンスー」を作るのにもおすすめです。

王朝みそ

まろやかなうまみと甘味がどんな料理にも合う「王朝みそ」/画像提供:玉那覇味噌醤油

国産丸大豆を自家製の米麹で仕込んだ味噌。まろやかさと甘味があるのが特徴で、そのまま味わってもおいしいので、野菜スティックなどをディップしておつまみにするのもおすすめです。

うっちんみそ

ウコンの香りが魚汁や豚汁、鍋料理など独特の臭みを消す「うっちんみそ」/画像提供:玉那覇味噌醤油

米味噌にウコンを配合したもので、ウコンの苦みが良いアクセントになっています。魚や豚肉を使う汁物料理の臭み消しにもなります。

沖縄を代表する調味料メーカー「赤マルソウ」

1950年に那覇市首里で「具志堅味噌醤油合名会社」として設立された「赤マルソウ」は、創業70年を超える老舗。味噌やしょうゆをはじめ調味料などを製造・販売しており、沖縄で有名な食品メーカーの一つです。

島の台所には欠かせない存在で、スーパーマーケットや商店にいけば手軽に商品が手に入ります。土産品店でも沖縄ならではの調味料などが手に入りますのでチェックしてみてくださいね。

いなむどぅちみそ

沖縄料理には欠かせない「いなむどぅちみそ」/画像提供:赤マルソウ

米麹で仕込んだ、低塩で甘口の白味噌。沖縄の祝い料理「イナムドゥチ」を作るための沖縄ならではの味噌ですが、スリ状になっていて溶けやすく、どんな料理にもなじみやすいのが特徴。ほかの味噌と合わせて味噌汁にしてもおいしいですよ。

米と麦のあわせみそ

味噌汁によく使われる「米と麦のあわせみそ」/画像提供:赤マルソウ

赤マルソウの味噌の中でも人気が高い一品。麦の風味と米の甘味のバランスが良く、シンプルに味噌汁で味わってほしい味噌です。

赤みそ

すっきりとした味わいで風味豊かな「赤みそ」/画像提供:赤マルソウ

大麦と大豆を使った無添加の味噌で、沖縄の昔ながらの味噌の味を踏襲しています。しっかりと発酵・熟成されているのが特徴で、赤みが強くやや辛口で、すっきりとした味わい。

沖縄ならではの離島の味噌

沖縄にはそれぞれの地域で造られてきた特別な味噌があります。ここでは、離島で造られている代表的な味噌を2つ紹介します。

ソテツ味噌/粟国島

自生するソテツの実。実にはサイカシンという毒素が含まれているので注意

ソテツは沖縄などに自生する植物で、実にはサイカシンという毒素が含まれています。食料が乏しい時代に、離島ではこれを加工して、飢えをしのいでいました。

毒素があるため、実を割って乾燥させて水に漬けてアクを抜くという作業を何度も繰り返し、粉末にします。ソテツ味噌では、このソテツの実の粉末からとったデンプンから造る麹を使用します。発酵・熟成に1年かけるというのもこの味噌造りの特徴。昔はソテツ麹100%で味噌造りをしていたようですが、現代では米麹を混ぜています。

ソテツ味噌で有名なのが粟国島。島へ行くと商店でソテツ味噌が販売されています。味は少し辛口ですっきりした印象です。

久米島味噌/久米島

島内では久米島の味噌を使ったそばなども味わえます

久米島は昔から味噌造りが盛んな島として知られています。久米島には水が豊富にあるため、稲作が盛んで大豆も作られてきました。さらに塩田もたくさんあったため、それらを活用して味噌が作られてきたといわれています。

久米島には味噌を造っているメーカーがいくつかあり、島内の商店でも販売されていますし、ホテルや旅館の朝ごはんの味噌汁や、食堂のメニューなどで味わえることもあります。優しい味わいの久米島味噌は島の自然の豊かさを感じさせてくれます。

沖縄定番の味噌料理

沖縄のハレの日の料理の一つ・イナムドゥチ

沖縄の味噌料理で有名なのが、琉球王国の時代から食されてきた祝い料理でもある「イナムドゥチ」。ブタの三枚肉や椎茸などを具材に、イナムドゥチ専用の甘い白みそを使います。

ほかにも、「ンブシー」という味噌煮込みも沖縄料理の定番です。また、本土では考えられない「ビッグサイズの味噌汁」も沖縄食堂の定番メニューです。

【関連レシピ】
「イナムドゥチ」沖縄の人が大好きな味!白みそ仕立てで甘めの汁物

郷土料理「あんだんすー(油味噌)」とは?

ご飯と一緒に食べるあんだんすー。お酒のアテにも!

あんだんすー(油味噌)は沖縄の味噌料理の中でも人気のある一品。沖縄に古くから伝わる保存食です。ブタの三枚肉(豚バラのこと)を1cmくらいの角切りにして油で炒め、味噌・砂糖・みりんを加えて炒め合わせます。

沖縄では家庭で作り置きしてご飯のお供にしたり、おにぎりの具材にしたりします。お茶請けにもしますし、お酒のアテにするのも最高です。市販品が土産品店やスーパーマーケットでも販売されていますので、お土産にもおすすめです。

【関連レシピ】
一家にひと瓶。『アンダンスー』があれば家庭円満!?

今回は沖縄の味噌について紹介しました。琉球王国の時代から食されてきた沖縄の味噌は島の大切な保存食。現代でもおなじみの郷土料理に欠かせない調味料として食されています。沖縄ならではの味わいを感じられますので、ぜひ一度味わってみてください。

参考文献:「沖縄コンパクト事典」(琉球新報社)
参考サイト:日本の食べ物用語辞典味噌めしやまるたま玉那覇味噌醤油赤マルソウかもめの本棚

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