「タンカン」から「シークヮーサー」まで|沖縄在来のミカンを紹介

太陽をたっぷり浴びた沖縄のミカンは格別のおいしさ!

温暖な気候に恵まれている沖縄では、1年を通して多種多様な果物が収穫されますが、秋から冬にかけては沖縄本島北部を中心にさまざまな柑橘類が実り、種類によってはミカン狩りを楽しむこともできます。中には沖縄在来の柑橘類もあり、道端や民家の庭先などでもその姿が見られます。

今回は、冬に旬を迎える「タンカン」をはじめ、全国的にも人気の「シークヮーサー」「カーブチー」など、沖縄で味わえる柑橘類を紹介します。

濃厚な甘さとみずみずしさが魅力!“沖縄ミカン”の代表格「タンカン」

冬の沖縄の味覚「タンカン」は贈答品としても人気

1~2月に旬を迎え、沖縄県のほか、鹿児島県の屋久島や奄美大島など温暖な地域での栽培が盛んな「タンカン」。漢字では「短桶」と書き、その昔、原産地の中国広東省で、行商人が短い桶(おけ)に入れて売り歩いていたことからこの名前が付いたといわれています。

日本には明治時代に台湾から鹿児島に伝わり、沖縄では大正時代に植栽されました。その後、研究が進められて本格的な生産が始まったのは1960〜1970代頃とされています。

濃厚な甘さで果汁たっぷり! ビタミンCも豊富です

タンカンは皮が傷付きやすいので、表面がぼこぼこしていたり、ざらざらしていたりと見た目はあまり良くありませんが、味に影響はありません。むしろ、この傷だらけで厚みのある皮においしい果肉が守られています。

さらに、タンカンの糖度は11~14度と柑橘類の中でもトップクラス。厚い皮をむくとたっぷりの果汁があふれ、甘い香りが漂います。カリウム、カロテン、クエン酸、ビタミン類など栄養素も豊富で、ビタミンCは温州ミカンの約2倍! 沖縄では冬の味覚としておなじみで、贈答用としても人気があります。

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健康成分が脚光を浴びている、沖縄を代表する特産品「シークヮーサー」

直径3、4cmの小さな果実に健康成分がぎっしり!

爽やかな香りと酸味が特徴で、沖縄の言葉で「シー(酸っぱい)」「クヮーサー(食べさせる)」を意味する「シークヮーサー」。古くから沖縄の人々に親しまれている在来柑橘で、昔は芭蕉布の染み抜きや、繊維を柔らかくする材料としても使われていました。

ビタミンC、ビタミンB1・B2、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの栄養素が豊富で、中でも、シークヮーサーに含まれるノビレチンという成分に、血糖値の上昇や高血圧の抑制などの健康効果があるとされ、国内はもちろん、海外からも注目が集まっています。

冬場はオレンジ色の「完熟シークヮーサー」がお目見え/画像提供:有限会社勝山シークヮーサー

シークヮーサーは収穫時期が長く、時期によって色や風味が変わるのが特徴です。夏から秋にかけて収穫され酸味がある「青切りシークヮーサー」は、刺身や焼き魚、揚げ物などに絞ったり、泡盛に加えるのがおすすめ。

1~2月頃の冬場にはオレンジ色で甘味があり、そのままおいしく食べられる「完熟シークヮーサー(フルーツシークヮーサー)」が生食用として店頭に並びます。

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長年にわたり県民に愛されている“皮が分厚い”ミカン「カーブチー」

「カーブチー」の分厚い皮は容易にむけて食べやすい

皮がとても厚いことから“カー(皮)ブチー(分厚い)”と呼ばれる沖縄在来種の柑橘「カーブチー」。酸味が少なく爽やかな香りがあり、皮をむいてそのまま食べるスタイルが主流です。近年ではカーブチーの果実独自の香りを生かした加工商品なども発売されています。

爽やかな香りと甘酸っぱさが特長の「カーブチー」

カーブチーはもともと沖縄各地に栽培エリアが広がっていましたが、第2次世界大戦の戦禍、台風被害などの要因で、栽培の中心は自然豊かな沖縄本島北部に移っていったといわれています。

また、琉球国王への献上品として栽培されていたという歴史的なエピソードがあるほか、収穫時期が9〜10月と秋頃のため、昭和から平成にかけては小中学校などの運動会で食べる、“運動会ミカン”として用いられるなど、時代ごとに愛されている柑橘です。

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長い歴史を持つ希少な在来柑橘「オートー」

昭和初期には沖縄柑橘の主流だった「オートー」

沖縄の在来柑橘「オートー」は、今から約300年前に漢方薬として中国から伝わり、「青唐九年母(オートークネンボ)」と呼ばれていましたが、九年母が省略され「オートー」になったといわれています。皮は滑らかでむきやすく、半透明で軟らかい果肉は少々の酸味と甘みがあり、多汁で、主に生食用とされます。

時代と共に生産量が減り、現在では希少な柑橘「オートー」/画像提供:おきなわワールド 文化王国・玉泉洞

昭和初期には約300トンの生産量を誇り、沖縄県の柑橘栽培の主流を占めていたオートーですが、商品性の高いタンカンなどの流通が盛んになるにつれ、1970~1980年代頃から生産量が減少。

近年では見かける機会が少なくなくなりましたが、現在でも県民の嗜好性は高く、11月下旬~1月の収穫時期(熟期は1月以降)には、沖縄本島北部を中心に地元消費用として直売されていたり、ミカン狩りを行っている地域もあるようです。

“あなたは誰?”と聞きたくなるミカン「タルガヨー(タルガヨ、タロガヨ)」

「あなたはカーブチー?オートー?」「いいえ、タルガヨーです」/画像提供:おきなわワールド 文化王国・玉泉洞

「タルガヨー(タルガヨ、タロガヨ)」は、沖縄の言葉で「あなたは誰?」や「何かなぁ?」を意味する名前が付いた沖縄在来柑橘です。カーブチーとオートーの交配種とされ、見た目がカーブチーとオートーに似ていることや、「こんなにおいしいミカン誰が作ったの?」という意味合いから、この名前になったともいわれています(諸説あり)。

名前の由来がとてもユニークな「タルガヨー」

タルガヨーは11月上旬からが収穫期で、緑色の皮が少しずつ黄色に色付いてきたら食べ頃です。黄橙色で軟らかくジューシーな果肉は香りが高く、上品な甘みがあるので子供や年配の人でも食べやすいミカン。

オートーよりも数が少ないとされ、現在では散在樹としてごくわずかに栽培があり、自家消費のほかに一部の地域で直売が行われている程度。こちらも希少ですので旅行中に見掛けた際は要チェックです!

日本の在来ミカンの親元「クネンボ」は濃厚な味わい

日本の柑橘類の祖先とされる「クネンボ」

東南アジア原産で、300年ほど前に中国南部から沖縄へ導入され、鹿児島県を経て本州に伝えられたとされている「クネンボ」。温州ミカンやハッサクなど日本の在来品種の花粉親でもあり、沖縄では「唐クニブ」「羽地(はねじ)ミカン」とも呼ばれています。以前は、「オートー」などと一緒に、沖縄のミカン栽培の主流でしたが、老木化や台風被害などにより栽培がわずかになりました。

クネンボは果汁が豊富で糖度が高く濃厚な味わいで生食されることが多く、昔は子供たちがお菓子代わりに食べていたともいわれています。中国から伝わり、琉球王朝時代に献上された沖縄の伝統菓子「橘餅(きっぱん)」の材料として使われていて、現在でもその味に触れることができます。

沖縄ならではの珍しいミカンが並びます

秋から冬にかけての沖縄は柑橘類の宝庫です。栽培が盛んな沖縄本島北部周辺のファーマーズマーケットや道の駅などには県外ではなかなかお目に掛かれない、さまざまなミカンが並びます。

また、沖縄本島南部・南城市にある観光施設「おきなわワールド 文化王国・玉泉洞」では「オートー」や「タルガヨー」をはじめ、沖縄在来種の柑橘類などが植栽されていてる「熱帯フルーツ園」があり、見学が可能です(果実の時期は天候などにより変動します)。

冬の沖縄旅行の際は、太陽をたっぷり浴びた沖縄ならではのミカンをぜひ味わってみてください。

【参考文献】「熱帯くだもの図鑑」(財団法人海洋博覧会記念公園管理財団 ※現・沖縄美ら島財団)、「特産のくだもの マンダリン類1(カブチー、オートー、ケラジ、タロガヨ、島ミカン、黄ミカン)」(社団法人日本果樹種苗協会)、「特産果樹」(社団法人日本果樹種苗協会)、「原色版 沖縄園芸百科」(株式会社 新報出版)

【参考サイト】公益財団法人中央果実協会沖縄の伝統的な食文化データベース

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