本州に比べて年間を通じて気温が高い沖縄ですが、野菜、果物、魚介類、海藻、それぞれに“旬”があります。旬を迎えた食材は縄県内の市場やスーパーマーケットに並び、家庭の献立や飲食店のメニューに追加されます。
今回は1月に食べたい食材や、旬のものを使ったレシピをご紹介します。沖縄旅行中に堪能することはもちろん、食材が手に入ったら、ぜひご自宅でもオリオンビールと一緒に沖縄の旬のものを味わってみてください。
1月の旬・野菜編
「島にんじん」を使った「にんじんシリシリー」で乾杯
島にんじんの旬:11月〜3月頃
沖縄のニンジンは“島にんじん”と呼ばれ、沖縄の言葉では“チデークニ”といわれています。チデークニの“チ”は“黄色”を指します。沖縄の島にんじんはオレンジ色ではなく黄色を帯びていて、オレンジ色のニンジンよりもカロテンを豊富に含んでいます。
産地としてはうるま市にある津堅島(つけんじま)が有名で、同島は“キャロットアイランド”という愛称が付いているほど。沖縄では大根おろし器のような“しりしり器”を使ってささがき風に切って炒める「にんじんシリシリー」や、沖縄の言葉で「チム」は肝、「シンジ」は煎じたものという意味の滋養強壮の汁物「チムシンジ」などが食卓に並びます。定食店の付け合わせや居酒屋メニューとしても楽しめます。
【レシピをチェック!】
「チムシンジ」疲れた体に染みわたる滋養強壮・スタミナ食
人参が2本あったら、『人参シリシリー』を作ろう。
【参考記事】
栄養満点で滋味あふれる沖縄の「島野菜」の魅力
那覇から最短15分!沖縄本島から日帰りできる離島特集
希少な「島大根」は冬のさまざまな料理に活用
島大根の旬:12月〜3月頃
寒くなって来ると、沖縄でも大根が出回ってきます。作付けが少ないので収穫量は多くはないですが、那覇市の鏡水大根(カガンジデークニ)、名護市の屋部大根、中城城(なかぐすくそん)の中城大根などがあります。
直径は20〜25cmで重さは3〜5kgほど。丸みのある外見が特徴です。味のしみ込みが良くて、煮くずれしない特徴があるので、煮込み料理に重宝されます。沖縄料理では「ふろふき島大根」、ニンジンと豚肉と合わせて炒める「大根イリチー」のほか、「大根餅」、汁物やサラダなど幅広く利用されます。
【レシピをチェック!】
シンプルなのに奥深い、おもてなし料理「如意素麺(ルーイゾーミン)」
骨付き鶏が決め手!おかずになる沖縄の具沢山スープ『鶏汁(とぅいぬしる)』
中はもちもち、外はサクサク。大根餅
【参考記事】
栄養満点で滋味あふれる沖縄の「島野菜」の魅力
宮廷料理でも重宝された栄養たっぷりの「田芋(ターンム)」
田芋の旬:12月〜4月頃
田芋はサトイモの一種で、産地としては宜野湾市の大山エリアが有名です。宜野湾市では田芋が最旬期を迎える2月6日を「宜野湾市ターウムの日」と定めて、毎年その日を中心に、田芋の普及推進のためにさまざまな施策を展開しています。
田芋は親芋の周りに小芋がたくさんできることから、子孫繁栄をもたらすことを期待してお正月、お盆、沖縄の先祖供養として行われる「清明祭(しーみー)」など祝い事の席でよく使われます。
居酒屋でも並ぶメニューとしては、「田芋の天ぷら」や「田芋の唐揚げ」をはじめ、那覇に伝わる煮物料理の代表「ドゥルワカシー」などが有名で、観光客にも人気です。
【レシピをチェック!】
甘じょっぱい味付けで後を引くおいしさ!「ターンムの唐揚げ」
【参考記事】
沖縄は3回お正月がある!? 正月に食べたい沖縄料理・レシピをご紹介
ほうれん草に似た味で大きな葉が特徴の「フダンソウ(ンスナバー)」
ンスナバーの旬:12月〜5月頃
沖縄の言葉で「ん」で始まる野菜・ンスナバーは暑さに強いので夏場の野菜としても重宝されていますが、耐寒性もあるので沖縄では冬場に多く出回る傾向があります。絶え間なく葉が生えてくることと、そうした“たくましさ”から和名では「フダンソウ(不断草)」と命名されています。
沖縄の言葉で“ンス”は“味噌”を指し、50〜60cmにもなる葉を煮ると、みそ汁のように柔らかくなることからこのンスナバーの名前が付いたといわれています。
沖縄の家庭ではこのンスナバーと豚三枚肉を茹でて、炒めた後にみそで味を調えた「ンスナバーンブシー」などで食されます。ちなみに、こちらも「ん」で始まる「ンブシー」は、沖縄の言葉で蒸し煮する調理法のことを指します。他にも、ロールキャベツの要領で、レタスの代わりにンスナバーを使う「ロールンスナバー」なども人気のメニューです。
【参考記事】
栄養満点で滋味あふれる沖縄の「島野菜」の魅力
数々の楽曲で歌われた沖縄の基幹作物「サトウキビ」
サトウキビの旬:12月〜3月
沖縄で生産される「サトウキビ」は日本で生産される約60%(2020年)を占める、まさに沖縄を代表する基幹作物の一つです。森山良子さんの「さとうきび畑」や、“ウージの森”と歌った宮沢和史さん(THE BOOM)の「島唄」など、沖縄をモチーフにした歌にも数多く歌われています。ちなみに、“ウージ”はさとうきびの沖縄方言名になります。
ちなみにさとうきびは主に「黒糖」に加工され、製造される場所によってさまざま味の特徴が出るので、お土産としても人気です。加工された黒糖は、カルシウム、カリウム、ミネラル、ビタミンB1、ビタミンB2など栄養素が豊富に含まれるので、健康食品としても注目を集めています。
さまざまな料理の隠し味として使われるほか、サーターアンダギー、ポーポー、ちんすこう、ムーチーなどのお菓子に使うとアレンジをきかせた味になるので、日常のさまざまなシーンで活躍しています。
【レシピをチェック!】
「サーターアンダギー」沖縄でおなじみのお菓子を自宅で簡単アレンジ|
「ポーポー」沖縄でおなじみのお菓子を自宅で簡単アレンジ!|
「ちんすこう」沖縄でおなじみのお菓子を自宅で簡単アレンジ!|
「ムーチー(鬼餅)」月桃の香りがさわやか!健康祈願に食べるお餅
【参考記事】
自然の恵みが詰まった「沖縄黒糖」の魅力を再発見!
沖縄の「ラム酒」サトウキビと島人の情熱が生み出した新しい島の酒
1月の旬・果物編
希少な沖縄の冬のスイーツ「カニステル」
カニステルの旬:1月〜4月頃
マンゴーやパイナップルなど沖縄のフルーツといえば夏のイメージですが、冬が旬のフルーツとして「カニステル」があります。この不思議な名前は、果実の形が英語で“カニスタア”と表現される“散弾銃の弾体”にその形が似ているからといわれています。沖縄の民家の庭先などでよく目にしますが、あまり市場に出回らないので、なかなか食する機会がないかもしれません。
果汁が少なく、焼き芋やカボチャに近いホクホクとした食感が特徴です。そのまま、またはシャーベットにして食べます。
【参考記事】
見て味わって南国気分!沖縄のレアなフルーツ・果物を紹介
やんばるの冬のフルーツ「タンカン」
タンカンの旬:1月〜2月頃
シークヮーサーと並んでミカン科に属する「タンカン」も“沖縄のみかん”として食されています。産地は、本部町(もとぶちょう)、大宜味村(大宜味村)、国頭村(くにがみそん)が有名です。
昭和40年代に沖縄に植栽されたタンカンは各種ビタミンが豊富で、特にビタミンCは温州みかんの約2倍も含まれています。味も香りも濃いため、マーマレードやジャムとしても重宝されています。
【参考記事】
見て味わって南国気分!沖縄のレアなフルーツ・果物を紹介
1月の旬・魚介類
栄養価が高く低カロリーの健康食材「ソデイカ」に舌鼓を打つ
ソデイカの旬:1月〜5月頃
沖縄が漁獲量日本一を誇るソデイカは、沖縄では“セーイカ”と呼ばれて、1月頃から食卓や居酒屋でも旬を迎えたソデイカが出回ります。特徴的なのは、その大きさ。大きいものでは体長1m、重さ20kg以上にもなり、食用のイカとしては世界最大級ともいわれています。
肉厚なので寿司のネタや刺身で食べるのがトレンドです。県内では昔から漁師の町として栄えた糸満市が拠点産地として認定されていて、県内の漁獲量の約40%を誇り、ブランド化が進められています。
【レシピをチェック!】
真っ黒な汁がインパクト大!ひと味違うコク深さ「イカスミ汁」
これぞビールのお供。無限に食べられる!?イカのくんせいと玉ねぎのおつまみ
県民の胃袋を支える「アオリイカ」のイカスミ
アオリイカの旬:1月〜5月頃
沖縄の食堂で「イカスミ汁」というメニューを見たこと、ありませんか? 本州ではイカスミのパスタなどでなじみが深いかもしれません。
肉質は硬めで歯応えと甘みがあり、刺身や寿司で食されることも多いです。特に、県民は豚骨スープにアオリイカを入れて、じっくりと煮込んだ「イカスミ汁」が大好物。お歯黒のように歯が黒くなりながらもコクのある味にたくさんの笑顔が生まれています。
【レシピをチェック!】
真っ黒な汁がインパクト大!ひと味違うコク深さ「イカスミ汁」
「シャコガイ」「ヤコウガイ」「タカセガイ」「マガキガイ」などの貝類も食べ頃!
シャコガイの旬:1月〜5月頃
ヤコウガイの旬:1月〜5月頃
タカセガイの旬:1月〜5月頃
マガキガイの旬:12月〜4月頃
沖縄全域でとれる「シャコガイ」はサンゴ礁の海域に生息しています。最大の「オオシャコガイ」は殻の長さは2m近く、重量も200kgオーバーになることも。食用のものは15cmほどの大きさで県外出荷されますが、飲食店ではお刺身として食べられています。
真珠色の光沢がある貝殻がボタンや螺鈿(らでん)の材料になる「ヤコウガイ」も1月に旬を迎えます。身は硬いですが、圧力釜などを使うことで柔らかくし、お酒、バターとしょうゆを使ったバター焼きなどが人気です。
そして、貝殻がかりゆしウエアのボタンなどに使われている「タカセガイ」も旬の時期に入ります。上記2つと違った巻き貝で、奄美大島以南のサンゴ礁にすんでいます。しょうゆ、塩、だしと一緒にご飯に入れて炊くと「タカセガイの炊き込みごはん」として味わえます。
沖縄では「こま貝」「ティラジャー」と呼ばれる「マガキガイ」が年末あたりから出始めます。干潮時に浜辺を歩くとティラジャーを見掛けることができます。お酒のおつまみとして居酒屋では、刺身、バター焼き、塩茹でなどで提供されます。スーパーマーケットでは下茹でされたむき身が売られていることも。
1月の旬・海藻類
万能食材「アーサ」も旬入り!
アーサの旬:1月〜4月頃
さまざまな食材で使われる「アーサ」は1月頃からおいしい時期に入ります。実は県外でとれる海藻の「アオサ」とは分類学上では異なります。県外の「アオサ」はほとんどが養殖ですが、沖縄のアーサは養殖もありますが、海岸の岩に自生した天然ものも多く出回っています。
沖縄では古くから食用として使われ、特にアーサをみそ汁の具として使う「アーサ汁」が代表的なメニューです。他にも、酢の物、天ぷらなどさまざまな料理で重宝されています。
また、栄養分も、炭水化物、脂肪分、食物繊維、ビタミン、ミネラルがバランス良く含まれているので、健康面でも重宝されています。
【レシピをチェック!】
お酒を飲んだ翌朝にもおすすめ。『アーサ汁』でほっこりしませんか?
参考図書:「沖縄食材図鑑」(有限会社楽園計画)、「おうちでうちなーごはん!」(ボーダーインク)、「からだにやさしい おきなわ島やさい」(ボーダーインク)