沖縄好きの皆さんは、これまでにも沖縄に関するさまざまな本を手に取ったことがあると思います。
沖縄が舞台の小説、沖縄をテーマにしたノンフィクション、沖縄の旅の様子をつづった紀行本など、そのジャンルはさまざま。さらに、ここ沖縄では大小さまざまな出版社があり、沖縄県内の本屋さんでは“沖縄県産本”のコーナーが設けられているほど。ぜひ、沖縄を旅する際は書店にも足を運んでみてください。
というわけで、そんな沖縄関連本の中から、今回は、沖縄の旅を感じさせてくれる【紀行本】をピックアップいたします!
細かい悩みごとを吹き飛ばす!? 癒やしの“紙上離島旅”「沖縄の島へ全部行ってみたサー」
1冊目は、北海道生まれの“紀行エッセイスト”として活躍する、カベルナリア吉田さんの「沖縄の島へ全部行ってみたサー」(朝日新聞出版)。
タイトル通り、カベルナリアさんが沖縄にある46の有人離島を巡ったフォトエッセイ集です。「沖縄の島に行きたいけど、多過ぎて迷っちゃう!」という時に、ぜひ参考にしてください。
本編は、渡嘉敷島から。“細かい悩みごとが全て消えた”という“慶良間ブルー”の海に驚きつつ、お酒好きのカベルナリアさんは、スタート6ページ目で早速、キンキンに冷えたオリオンビールを調達し、“オリオンタイム”を満喫します。
その後、慶良間諸島、粟国島、久米島周辺、伊是名島、伊平屋島など北部周辺の島、うるま市の海中道路でつながる平安座島(へんざじま)などの中部の離島、久高島(くだかじま)など南部の離島の後は、大東諸島、那覇空港から近い瀬長島と続き、宮古諸島、八重山諸島を訪れます。
文庫本で300ページ超の“紙上離島旅”を楽しんだら、次は、実際に気になった島を訪れてみてください。
「沖縄の島へ全部行ってみたサー」(朝日新聞出版)
カベルナリア吉田著
定価:968円(税込)
ISBN:978-4-02-261659-3
八重山に通い続けたからこそ生まれた「約束の島、約束の祭」
2冊目は、日本全国の祭りを撮影している箭内博行さんのフォトエッセイ「約束の島、約束の祭」(情報センター出版局)。
箭内さんの写真から感じるのは、沖縄の祭りは“色彩”が鮮やかだなぁということ。衣装や祭りで使うアイテムももちろんなのですが、海の青、木々の緑、空の青、ハイビスカスの赤など、沖縄の自然もその印象を後押ししています。
「島々の祭からは、その土地の民の心意気を垣間見ることができる。たどってきた歴史や、暮らしの背景も知ることができる。」箭内さんが祭りを追う心のうちを感じさせてくれる言葉にも出合えます。
ただ、「八重山に足を運んで、祭事や人の中に入って、島人たちと交流しながら」というスタンスの箭内さんだからこそ、この本が生まれたんだなぁと感じられる1冊です。箭内さんの言葉や写真から“八重山の空気”を感じてみませんか。
「約束の島、約束の祭」(情報センター出版局)
箭内博行著
定価:1,650円(税込)
ISBN:978-4-7958-4872-6
名作家、名著の沖縄の島旅編「街道をゆく 6・沖縄・先島への道」
3冊目は、作家・司馬遼󠄁太郎さんの名著「街道をゆく」(朝日新聞出版)です。「街道をゆく」は、週刊誌「週刊朝日」の連載として、1971年にスタートし、司馬さんが亡くなる1996年まで約25年間続いた連載です。まさに、ライフワークですね。文庫本にして43冊に及ぶ、一大紀行シリーズの6冊目に沖縄の旅があります。
司馬さんの旅は、沖縄の玄関口でもある那覇から。この章から廃藩置県のエピソードが出てくるあたり、時代小説の名作を数々残した司馬さんならでは。でも、編集者や地元新聞記者とのエピソード、トイレでの小話などが随所に出てくるので、肩肘張らずに読めますので、ご安心を。
那覇から糸満と続き、司馬さんは当初の目的地でもある先島へ向かいます。沖縄の歴史や文化のことももちろん入ってきますが、ほぼ全てのページに地元の人との会話が挿入されているのが特徴。読みやすくもあり、かつ、その時の空気感が行間から伝わってきます。
この紀行文が「週刊朝日」に掲載されたのが1974年。当時の沖縄の空気感も楽しんでください。
「街道をゆく 6・沖縄・先島への道」(朝日新聞出版)
司馬遼󠄁太郎著
定価:594円(税込)
ISBN:978-4-02-264445-9
八重山・宮古の温かい旅路をつづった「ていねいに旅する沖縄の島時間」
4冊目は、「ていねいに旅する沖縄の島時間」(アノニマ・スタジオ)をご紹介します。編集者、絵本作家として活躍するかいはたみちさん(現在は、ながもとみちさんの名前で活動)のフォトエッセイです。
八重山諸島、宮古諸島の14の離島を、じっくり旅するガイドブックになっています。風景などのきれいな写真は大きく、カフェなどカワイイ店は切り抜きを使うなどデザイン処理もかわいく、誌面を見ているだけでも楽しめます。
通常のガイドブックと違うのは、編集者としてこれまで離島を旅してきた彼女が「心の奥底から温かい気持ちが湧き起こって」きた人たちや自然を紹介している点。まさに、彼女自身が“ていねいに”旅をしてきた足跡となっています。
写真は、沖縄を拠点に活動している垂見健吾(たるみ・けんご)さんと小早川渉(こばやかわ・わたる)さんの2人の写真家が担当していて、写真を見ているだけでもついつい癒やされてしまいます。
かいはたさん流の“ていねいな”旅路に浸ってください。
「ていねいに旅する沖縄の島時間」(アノニマ・スタジオ)
かいはたみち著
定価:1,760円(税込)
ISBN:978-4-87758-726-0
こんな視点もあったのか! 的な沖縄の旅が楽しめる「沖縄女ひとり旅」
5冊目は、気軽に読めるコミックエッセイをご紹介します。旅行関係の書籍を多く手掛ける編集者・ひらがさとこさんの「沖縄女ひとり旅」(KADOKAWA)です。
暇を見つけては沖縄に通っていたひらがさんの“おひとりさま旅”。表紙にもオリオンビールが描かれているように、お酒がお好きなひらがさん、プロローグの4ページ目に「オリオンビール工場見学」や「オリオンビール」のイラストが登場します。
首里城や第一牧志公設市場周辺のアーケード街など定番観光をディープに楽しんだり、パワーストーンの店や食堂で買い物をしたり、食事をしたり、久高島ややんばる(沖縄本島北部)へちょっと遠出したり…沖縄に通ったひらがさんの、自由気ままなおすすめの“女ひとり旅”を追体験できます。
第4章の「女ひとりほろ酔い旅」では、名護市のオリオンビールの工場へ。車の運転ができないひらがさんは路線バスで名護市へ向かい、工場見学を楽しみます。もちろん(!?)ひらがさんのお楽しみは、試飲できるオリオンビール! ビアナッツと一緒に楽しむ様子が描かれています。帰りのバスが渋滞にはまり、ビールを飲み過ぎたひらがさんはトイレに行きたくなってソワソワしてしまいます…。
思わずクスリとさせられてしまうひらがさんの旅が楽しめます。
「沖縄女ひとり旅」(KADOKAWA)
ひらがさとこ著
定価:1,210円(税込)
ISBN:978-4-04-601226-5
“旅人作家”立松和平の“原点”ともいえるエッセイ「沖縄 魂の古層に触れる旅」
最後は、こちら。作家であり、紀行文を多く残した立松和平さんの「沖縄 魂の古層に触れる旅」(NTT出版)。生前、報道番組「ニュースステーション」(テレビ朝日系)で旅のコーナーを担当されていたこともあって、立松さんの本を読んだことがない人でも、名前を聞いたことがある人も多いかもしれません。
本書は、那覇市で発行されていた雑誌「うるま」に連載されていたコラムを1冊にまとめたもの。
立松さんが初めて沖縄を訪れたのは、1966年だったそうです。貧乏旅行だった当時を振り返って、立松さんも名護市のオリオンビール工場で試飲のビールを楽しんでいたことを明かしています。
本土復帰前の貴重な様子がつづられていて、本州では“高嶺の花”だったコンビーフ缶が沖縄にはあふれていたこと、日本円をドルに両替したこと、ヒッチハイクをしたこと、ユースホステルに泊まっていたことなど、リアルな旅を実感できます。
そして、立松さんは30代半ばの頃、“援農隊”として与那国島のサトウキビ農家を手伝うために、2カ月半程度与那国島に滞在しています。当時、カルチャーショックを感じた立松さんの熱量と、与那国島の歴史が育んできた島の熱量とが相まって、単行本70ページ弱のボリュームに。一定期間住んでいたからこその体験が、この貴重な文章を生みました。
立松さんが“旅人”となる、まさに“原点”とも言えるのが、沖縄の旅だったんですね。
「沖縄 魂の古層に触れる旅」(NTT出版)
立松和平著
定価:1,980円(税込)
ISBN:4-7571-5045-8
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