寝かせるほどにおいしく。泡盛「古酒」の魅力とは?

「古酒」の進み具合で“味変”が楽しめるのも泡盛の魅力!

アンティーク(骨董品)やヴィンテージ…これらは、年月の経過でさらなる魅力が出てくるもの。沖縄のお酒「泡盛」も、置いておくほど熟成が進み、まろやかになるのが魅力の一つです。熟成された泡盛のことを沖縄では「古酒(くーす)」と呼びます。

今回は、泡盛の古酒についてご紹介します。

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古酒の定義は「3年」から

泡盛の古酒の定義は「3年以上熟成させた泡盛が全量100%」の場合、「古酒」の表記が許されます。異なる年数の古酒をブレンドする場合は、若い方の年数を表示します。つまり、5年古酒に3年古酒をブレンドすると、表記は3年古酒になってしまいます。古酒は熟成が進む間、次第にバニラのような甘い香りが出はじめ、さまざまな香りを醸し、豊かな風味を増していきます。

ウイスキーやブランデーなどの洋酒にも20年、30年クラスの古酒はあります。しかし、洋酒と泡盛の古酒は、次の点で大きな違いがあります。

○洋酒
原則として樽に貯蔵され、樽からバニラの香りやスモーキーな香りなどのさまざまな成分をもらって熟成し、古酒になっていく。

○泡盛
泡盛に含まれる成分そのものが、長期熟成することによって、物理的変化、科学的変化をへて香味成分などに変化していき、まろやかで、甘い香りを醸し出す。

樽の力をもらって古酒になる洋酒は、樽から出して瓶詰めをすると古酒化が進まなくなるといわれるのは、上記のような理由からです。一方の泡盛は、自らの成分そのものを変化させて古酒になっていくので、瓶詰めした後でも古酒化が進んでいきます。

100年古酒も可能にする「仕次(しつ)ぎ」とは

楽しんだ(飲んだ)分だけ、若い酒から次々と補充する/沖縄県酒造組合提供

そのまま寝かせて(熟成させて)も古酒となりますが、芳醇な香りとまろやかな味わいを永続的に楽しむためにも、家庭では「仕次(しつ)ぎ」という手法が用いられます。

泡盛はどんなにアルコール度数が高く、古酒になる成分をたくさん含んでいたとしても、そのまま置いておくだけではとても100年、200年は持たず、やがて酢になり水に戻ってしまうかもしれません。

それを防ぎながら、なおかつ熟成を重ねて100年以上の古酒を育てるための技術が、琉球王朝時代から沖縄には伝わってきました。

酒造所では仕次用の甕も販売されている/請福酒造(有)提供

具体的にいうと、年代物の古酒にそれより少し若い古酒を注ぎ足すことで、古酒の熟成した香りや芳醇さを保ちながら、酒を劣化させないようにする手法です。

名家では年代物の泡盛古酒の甕を古い順に親酒(一番)から五番、六番まで用意したといいます。親酒から最上の古酒を飲む分だけくみ取ったら、その減った分をそれより若い二番酒から注ぎ足し、二番酒には三番酒から…というようにどんどん循環させます。

こうすることで古酒の香りを損なうことなく、逆に深めながら、お酒の質も落とさないように工夫していました。こうして、子や孫、ひ孫へと自分の家の酒を継承していくそうです。

泡盛の古酒づくりができるスポットも

オープン当初から寝かせている泡盛もある「古酒蔵」/(有)インターリンク沖縄提供

沖縄・金武町(きんちょう)にある「古酒蔵」。ここでは鍾乳洞に泡盛を寝かせて、古酒にするサービスがあります。金武鍾乳洞を活用し、洞内は18度と一定気温を保ちます。自然環境を活用した日本初の古酒蔵として、1988年に完成しました。

誕生記念や旅行記念など、さまざまな泡盛が寝かされている/(有)インターリンク沖縄提供

ボトル込みの料金を支払うだけで利用できる古酒蔵は、10年間寝かせる人が最も多く、古酒蔵オープンから33年間続く今も、当初から寝かせている人もいるそうです。

利用する人は、子供の誕生記念や沖縄旅行記念など、その理由もさまざまで、タイムカプセルのように未来への自分に作る人も。また、結婚祝いにプレゼントする人も多くいます。 まろやかで、甘い香りを醸し出す泡盛の古酒。開けた時には寝かせた分だけのおいしさと幸せな酔いに包まれるでしょう。

古酒の楽しみ方を泡盛マイスターに聞いてみました

寝かせるだけで、芳醇な香りとまろやかな味を楽しめる古酒。しかし、飲み方を誤れば、せっかくの良いお酒も台なしです。そこで、今回は泡盛のプロである「泡盛マイスター」の塩川学(しおかわ・まなぶ)さんに古酒や飲み方など、いろいろとお話を伺いました。

〇泡盛のプロである「泡盛マイスター」とは
「泡盛マイスター」とは、泡盛マイスター協会が発行するライセンスで、銘柄ごとの味の違いや歴史、料理との相性やテイスティング、製造方法や医学的効果、酒類全般等などに精通した総合的なアドバイザーを指します。アルコール飲料に関する日本初の公式認証となります。

塩川さんは、泡盛マイスターの中でも保有資格5年以上、コンペでの上位入賞、泡盛のPR活動を積極的に取り組んでいる人のみに与えられる「泡盛シニアマイスター」の資格を有しています。

泡盛シニアマイスターの塩川学(しおかわ・まなぶ)さん

泡盛・古酒のおすすめの飲み方とは?

「泡盛の古酒の定義は3年からで、3年未満の泡盛(一般酒)は基本的に水割りで飲むのが主流。ただ、本土の人は水割りよりもロックで飲む人が多いので、どうしても『臭い、キツイ、強い』というイメージがまだ拭えないようです」と、まずは飲み方の現状について言及。

でも、古酒は何でも割ればいいのかというと、そういう訳ではなく、「5年未満のものであれば、メーカーによって古酒の香りに寄せたものもあれば、一般酒に寄せた古酒もあり、金額や資質も異なってきます。なので、5年未満のものに関しては気にせずに、ロックでも水割りでも自分が飲みやすいように飲んでもらえればと思います」とアドバイスを。

また、「7年、10年の古酒となると急激に熟成するので、泡盛の香りや味わいに落ち着きが出ます。ロックで飲むのがオススメですが、お酒に強くない方は加水(少しずつ水を加えること)をオススメします。そうすることで、泡盛の隠れている香りも出やすく、本来の味わいが楽しめます。10年以上になると、ちぶぐゎー(小さなおちょこ)で、ちびりちびり飲みながら、舌で転がしながら味わうのがいいですね」と、それぞれのお酒の質によっておすすめの飲み方があることを教えてくれました。

10年以上の古酒はちぶぐゎーで、ちびりちびりと…/©OCVB

自分の好みにあわせてソーダで割ったり、そのまま楽しんだりアレンジできるのも泡盛の魅力。最近は、25度で10年ものとか、度数の低い古酒を製造している酒造所も増えているので、度数が高すぎて苦手という人も、より気軽に楽しむことができるようになっています。

甕の熟成が難しければボトルもおすすめ

古酒を寝かせて楽しむなら、お土産品店でよく見掛ける甕のタイプがいいのですが、管理が大変だといいます。「甕は呼吸をするので泡盛が熟成し成長しますが、呼吸がひどい甕だと泡盛がダメになってしまいます。確認の方法として、まずは買った時に全体の重さを計り、1~2年くらい寝かせて再度重さを計った時に0.2~0.3%減っていれば、その甕は大丈夫。これが数%~10%とか急激に減るものは甕の質が悪いので、寝かせずに飲んだ方がいいですね」と見分け方は“甕の呼吸”がポイントとのこと。

「甕が問題ないとしても、カビがないか、しっかりと熟成しているか、定期的なチェックが必要なので、管理が大変ですね。甕で熟成を楽しみたい人は、重さを定期的に確認しつつ、香りの変化を感じて、『この香りいいな』と思った時が飲み頃。ボトル(3合瓶)でも熟成は進むので、甕の管理が難しいと思った人はボトルの購入をオススメします」とコメント。無理をせず、各自のスタイルで楽しむことが大事なようです。

他のお酒と違い、寝かせることで味が変わっていく泡盛の古酒。味わう際は、熟成されたその年月に思いを馳せながら楽しんでみてください。

参考サイト:琉球泡盛(沖縄県酒造組合)

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