八重山の「アンガマ」|先祖を敬う沖縄ならではの祭事

沖縄の土産品店でおじいさんとおばあさんのお面が売られているのを見たことがありますか? おでこや頬に深い皺が刻まれ、どこか“徳”がありそうな笑顔を見せているそのお面は、“アンガマ”と呼ばれ、石垣島など八重山地方に伝わる旧盆の行事で使われているものです。

毎年旧盆に合わせて行われるアンガマ/写真提供:石垣市

2022年の旧盆は、新暦の8月10日(水)〜8月12日(金)の3日間。この時期に家々や辻を囲って、歌舞を行う念仏踊り、本州でいうところの盆踊りが行われます。地元の人だけでなく、観光客も見学ができる祭事になっていますが、地域の大切な伝統行事ですので、妨げにならないようマナーを守って見学しましょう。

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アンガマの起源は17世紀、桃林寺に由縁あり

桃林寺(とうりんじ)

このアンガマの起源は明らかになっていませんが、アンガマが念仏踊りということを考慮すると、「宮良親雲上(みやらペーチン)が桃林寺(とうりんじ)で阿弥陀講を設けて浄土者を琉球から稽古させて、葬列に備わせた」という八重山に初めて念仏をもたらせた記載が残されていることから、17世紀の1657年までさかのぼるとされています。

アンガマの語源は「懐かしい母親」?

そもそもこのアンガマですが、語源も明らかではありません。「姉」を意味する言葉、「覆面」を指す言葉、「踊りの種類」を指す言葉、「懐かしい母親」を意味する言葉、「精霊と共に出てくる無縁仏」を指す言葉などの説がありますが、アンガマには親孝行の歌が多く、覆面をする意味も「親の霊に顔向けできないが、感謝の気持ちを伝えたい」という意味があるのではないかということであり、その話の流れから類推すると、「懐かしい母親」を意味する言葉の説が有力だと推測されます。

アンガマは話術のテクニックが必要!?

アンガマの祭事はエイサーなどと同様に地元の青年団が行っていて、旧盆が近づくと青年団が練習を行なっています。20〜30人が一団となって町に繰り出し、まずは死人のあった家を訪れ、琉球王国時代から伝わる音楽を奏でます。

アンガマは話術の腕も試されます/写真提供:石垣市

その音楽が佳境に入った頃に、ウシュマイ(おじいさん)とンミー(おばあさん)のお面を付けたアンガマが登場します。アンガマは裏声を使ってあの世のことについてあれこれと語っていきますが、見物人の中からあの世の生活について質問があがります。その時に、即妙にあの世のことについて答えなければならず、その返事はもっともらしく、かつユーモアを必要とされていて、なかなかテクニックが必要とされています。

その一軒の家が終わると、次の家に向かいますが、その間も三線と太鼓が止むことはありません。こうして、死者を弔い、死んだ人のことを思う祭事は続いていきます。

水木しげるさんも絶賛したアンガマ

「約束の島、約束の祭」(情報センター出版局)

「約束の島、約束の祭」(情報センター出版局)で著者の箭内博行氏は、「時にアンガマは、あの世とこの世が密接な関係にあること、つまり『死』について、考えさせるきっかけを与えてくれる。」とつづっています。アンガマが行われる家には地域の子供たちも参加しますが、こういう祭事が身近にあることで自然に死生観を身に付けられる環境ができているんですね。

書籍「沖縄いろいろ事典」(ナイチャーズ編、新潮社)に、あの「ゲゲゲの鬼太郎」を生んだ漫画家・水木しげるさんがアンガマについて書いていますが、「死者を弔い、死んだ人のことを思う行事としては、世界最高のものだと思う。ほがらかな中にも、死者に対するあたたかさも存分にあり、それに喜んでもらおうとする歌舞がとてもいい。ぼくは大好きだ。“百聞は一見にしかず”、一度見てみなさい、正に世界一です。」と、絶賛されています。

地元の人に大切にされるアンガマ

石垣島の登野城地区のアンガマでは、実に150年以上前から伝わるウシュマイとンミーのお面が使われていました。このお面は、1844年に忠順氏黒島良慶が17歳の頃に生んだ傑作と伝えられています(牧野清著『登野城村の歴史と民俗』より)。ただ、貴重なお面がこれ以上損傷することを避けるため、1991年、八重山博物館に永久寄託されました。現在は、登野城在住の新城弘志氏がそのお面をモデルに新しいお面を作り、それが使われています。

登野城地区のアンガマ面/写真提供=石垣市立八重山博物館

デイゴでできたこの古いアンガマのお面がきれいな状態を保っているのは、字登野城の人たちがこのアンガマの祭事を大切に受け継いできたから。毎年盆の翌日には獅子祭りの日があるのですが、この日にアンガマ面を塩水で蒸して保存してきたそうです。

現在では、アンガマのお面は家の新築などの祝い事で贈られ、島を離れて暮らす八重山出身者への贈り物にされるなど、お面を床間に飾る家も増えました。土産品としても人気で、ミニチュアの壁掛け、ポスターやTシャツのモチーフとしても使われるなど、沖縄の土産品店で目にした人も多いかもしれません。そんなときはこのアンガマの祭事に込められた思いを巡らせてみてください。

参考図書:「沖縄いろいろ事典」(ナイチャーズ編、新潮社)、「約束の島、約束の祭」(箭内博行著、情報センター出版局)、「沖縄の年中行事100のナゾ」(比嘉朝進著、風土記社)

参考サイト:盆踊りの世界やいまタイム

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