沖縄本島中部のうるま市東海岸から太平洋に突き出す勝連半島の丘の上に位置し、2000年に世界文化遺産に登録された「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の一つ「勝連城跡」。
今回は、12~13世紀頃に築城されたと考えられ、沖縄本島内における世界遺産のグスクの中で最も古いとされる「勝連城跡」をご紹介します。
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今なお発掘調査が続く「勝連城跡」の歴史と見どころ
東西に細長く延びる勝連城跡は、標高約60~98m。城壁は、自然の地形を巧みに利用しながら、琉球石灰岩の石垣を巡らせています。緩やかな美しい曲線状に築かれているのが特徴で、その姿は巨大な進貢船にも例えられています。
構造は、それぞれ役割の異なる五つの曲輪(くるわ)から成り、西側で標高が一番高い「一の曲輪」から東側へ「二の曲輪」「三の曲輪」「四の曲輪」と各平場が階段状に低くなり、再び南東側の「東の曲輪」で高くなっています。
一番低く入場口に近い「四の曲輪」には、水の量で一年の豊作を占う場所といわれる「ウタミシガー」や城内から出られない若者たちがそこで恋をしたという言い伝えが残る、縁結びの井戸「ミートゥガー(夫婦ガー)」など複数の井戸を見ることができます。
四の曲輪から細長い石畳道を上がると、三の曲輪へと続き、登城する際の控えの場所とされる「肝高の御嶽」を見ることができます。この場所は、沖縄の御願行事・ウマチーの際の休憩場所とされ、神人(カミンチュ)が腰かける座石「トゥヌムトゥ」も置かれています。
続いて、二の曲輪には、間口(横幅)約17m、奥行き(縦幅)約14.5mの長方形をした殿舎跡が残っています。この建物は礎石に硬砂石を利用した首里城正殿のような柱の多い構造で、瓦葺ぶき仏殿風建物だったと推測されています。城の台所とされる「ウミチムン(火の神)」があり、曲輪内の配置と規模から政治的な表舞台を演出する施設だったと考えられるそうです。
二の曲輪と三の曲輪は、それぞれ独立しているようにも見えますが、二の曲輪が舎殿跡の基壇部、三の曲輪はその前庭部になっています。二の曲輪の基壇は勝連城跡でも数少ない石積みが残っている場所で、琉球石灰岩を直方体に加工した石が積まれていることから布積みと呼ばれています。
さらに「一の曲輪階段」を登り切ると最後に現れるのは、城内で最も高い場所に位置する「一の曲輪」です。ここには、巨大な岩をご神体として、1年中御礼や諸方への拝みのお通しをする「玉ノミウヂ御嶽」があります。そして、勝連城跡を訪れたからには外せないのが、この場所からの眺望です。
北は沖縄本島北部の山々や金武湾(きんわん)、伊計島、平安座島(へんざじま)などの離島を望み、南は知念半島から中城湾(なかぐすくわん)、久高島、中城城跡までが見渡せる360度のパノラマビューは「勝連城跡」最大の見どころ。入口からは急こう配や長い階段が続きますが、「一の曲輪」からの景色はその疲れも忘れてしまうほどです。
最後の城主「阿麻和利」のエピソード
12~13世紀頃に築城された勝連城はその後、按司(あじ)と呼ばれる領主が支配しました。9代目で悪政を強いていたとされる茂知附(もちづき)按司を倒し、民を救った人物が、勝連城の最後の城主として知られる10代目の阿麻和利(あまわり)です。
彼は人々に肝高(心豊か、気高いなどの意)の阿麻和利と呼ばれて慕われ、中国、東アジアなどとの交易を盛んにして地域に貢献しました。現在も発掘調査が続く勝連城跡では、中国や日本製の陶磁器などが多数見つかっており、阿麻和利をはじめとする城主が海外との交易に尽力したことが推測されます。
地元では阿麻和利を名君とする「おもろ(沖縄の古い歌謡)」が残り、沖縄最古の歌謡集「おもろさうし」では、「勝連は大和の鎌倉にたとえる」と歌われているなど、当時の勝連城跡周辺の繁栄ぶりもうかがえます。
また、現在ではうるま市の中高生が、沖縄の伝統芸能「組踊」をベースに現代音楽とダンスを取り入れながら阿麻和利の半生を演じる現代版組踊「肝高の阿麻和利」も沖縄県内外で上演されるなど、その伝統はいまなお語り継がれています。
勝連城跡は、この地に尽力した阿麻和利の生き様と情熱を目の当たりにできる歴史スポットです。次の沖縄旅行の際には、ぜひ足を運んで、彼も眺めたであろう景色と悠久の時の流れを感じてみてください。
「勝連城跡」
住所:沖縄県うるま市勝連南風原3908(あまわりパーク)
電話:098-978-2033
URL:https://www.katsuren-jo.jp/
※新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から臨時閉園中(当面の間)
現代版組踊「肝高の阿麻和利」公式ホームページ
URL:https://www.amawari.com/
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