沖縄・那覇空港に降り立った皆さんは、それぞれの目的地に向け、さまざまな交通手段を利用すると思います。その中でも「ゆいレール」を利用する人も多いのではないでしょうか?
この「ゆいレール」、開業は意外と最近で、2003年8月です。生まれてから間もなく18年を迎えます。もともとは、那覇空港から首里駅までの12.9kmを30分弱で結んでいました。
開業日となった2003年8月10日の朝、平和と豊年を呼び寄せる神「首里赤田のミルク(弥勒)神」に見送られるようにして、ゆいレールは首里駅から那覇空港駅に向けて出発しました。開業当初は車両ドア付近に固まって立ってしまうなどしていた沖縄県民も、次第に乗車マナーを身に付けていったそうです。
そして、2019年、今までの首里駅から先、石嶺駅、経塚(きょうづか)駅、浦添前田駅、てだこ浦西駅の4駅が延長し、第2の開業を迎えました。
日本最西端と最南端を一度に体験!
那覇空港の2階出発ロビーから渡り廊下でつながるゆいレールの那覇空港駅へ向かうと、改札の横に石碑が立っています。これまでは長崎県の松浦鉄道西九州線の「たびら平戸口駅」が日本最西端の駅でしたが、那覇空港駅の誕生で、ここが日本最西端の駅となったのです。
そして、那覇空港駅からゆいレールに乗車すると、2駅目は「赤嶺駅」です。外国人観光客にも人気のスーパーマーケット「フレッシュプラザユニオン赤嶺店」があります。ちなみに、この赤嶺駅は「日本最南端の駅」なのです。1路線で「日本最西端」と「日本最南端」が体験できるという、ちょっとお得な気分になれます。
その後は、こちらも外国人観光客にも人気のスーパーマーケット「イオン那覇店」がある小禄(おろく)駅、ちょっと読み方が難しい「奥武山公園(おうのやまこうえん)駅」、国場川沿いにある「壺川駅」と進み、沖縄観光の拠点となる那覇バスターミナルがある「旭橋駅」と続きます。旭橋駅に隣接する那覇バスターミナルの上の階にはショッピングモールや沖縄県立図書館もあり、観光客だけでなく、県民も多く集う場所になっています。
そして、行政の中心地「県庁前駅」、国際通りの中心や繁華街の一つ・久茂地(くもじ)に近い「美栄橋(みえばし)駅」、国際通りの東側に近い「牧志駅」、近年“せんべろ”エリアとしても人気の栄町(さかえまち)市場がある「安里(あさと)駅」となって、ここで国道330号線と交わります。
ゆいレールで町を上から眺める“エンタメ的観光”
ここまで来る前に気づくと思うのですが、このゆいレールは那覇の町を上から眺めることができるのです。モノレールには車体の重心が走行軌道の上にある跨座型(こざがた)と、走行軌道を走行する台車から車体が垂下されている懸垂型(けんすいがた)がありますが、ゆいレールは、より高い目線となる跨座型。そんなエンターテインメント的な要素もゆいレールでの観光気分を盛り上げてくれます。
では、ゆいレールの旅に戻りましょう。安里駅の次は、米軍基地返還後、ショッピングモールや沖縄県立博物館・美術館などが立ち並ぶなど目覚ましい発展を遂げた「おもろまち駅」、住宅街として多くの人が生活する「古島(ふるじま)駅」、那覇市立病院に連絡通路で直接つながる「市立病院前駅」、そして、首里城公園への北側の出発地点となる「儀保駅」、そして、沖縄の伝統文化を育んだ古都・首里のお膝元となる「首里駅」に到着します。
2019年に4つの新駅が誕生!
そして、ここから先に2019年に開通した新駅が登場します。首里駅から北に向かい、「石嶺駅」、浦添市(うらそえし)となる「経塚駅」「浦添前田駅」「てだこ浦西駅」。このあたりは、観光地というよりは県民が多く暮らすエリアですが、終点の「てだこ浦西駅」から歩いて15分ほどのところに「浦添グスク(城跡)」があります。琉球王国ができる前、中山王(ちゅうざんおう)が居城とした城で、国指定の史跡となっています。
ちなみに、「てだこ」は沖縄の言葉で「太陽の子」という意味です。琉球第二の王統として栄えた英祖王の敬称でもありました。そこで、浦添市は「すべての市民が太陽のように光り輝き、世界に開かれた活力あふれる平和で豊かな住みよいまち」へ発展し続けていくようにという願いを込めて「てだこの都市(まち)・浦添」として町おこしをしています。
実はゲームにもなっていた!?
ちなみに、ゆいレールですが、2015年にはニンテンドー3DSのソフト「鉄道にっぽん!路線たび『ゆいレール編』」(ソニックパワード)としてゲームにもなったのです。運転席からの風景がリアルに再現されていて、鉄道ファンだけでなく沖縄ファンにとってもうれしいゲーム化でした。
沖縄にも鉄道があった!?
ところで、沖縄県にはかつて鉄道があったことはご存知でしょうか。沖縄好きの皆さんはご存知の人もいらっしゃるかもしれませんが、戦前、沖縄には「軽便(けいびん)鉄道」という鉄道が走っていました。
「軽便鉄道」が走っていたのは、南は糸満から北は嘉手納まで。那覇の国場駅を分岐に糸満線と与那原(よなばる)方面へ向かう「与那原線」とに分かれます。国場駅から古波蔵(こはぐら)駅を経由して嘉手納方面へ向かう「嘉手納線」の3路線で、全33駅で構成されていました。
現在、那覇バスターミナルの脇に、この軽便鉄道の転車台の遺構が残されていたり、沖縄県の鉄道発祥の地である与那原町は軽便鉄道時代の駅舎を再現して町おこしをしていたりと、わずかながら現代にもその面影を伝える場所が遺されています。
ご紹介したように、沖縄唯一の軌道交通であるゆいレールは沖縄の玄関口である那覇空港に直結し、那覇の主要なエリアを結んでいます。観光での利便性もありますが、夜遅くまで運行しているので、繁華街でオリオンビールを楽しんだ後もぜひ利用してみてください。
参考文献:「ぼくの沖縄<復帰後>史」(新城和博著、ボーダーインク)、「沖縄軽便鉄道」(文:ゆたかはじめ/絵:松崎洋作、海鳥社)
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